■産経「国民の憲法」のシンポジウムで関西民間憲法臨調代表幹事の奥村文男氏が出演

なかなか面白い内容ですので、ご覧下さい。

●今こそ「前のめり」になる時[産経ニュース 2013.8.16より抜粋

 □元日本共産党政策委員長・筆坂秀世氏

 □元拓殖大総長・小田村四郎氏

 □大阪国際大名誉教授・奥村文男氏

 □司会・丹羽文生拓殖大准教授

 <小田村> この「国民の憲法」要綱は各政党などの改憲案の中でももっとも優れていると感じましたが、どうしても現行憲法にとらわれて、なくてもいい条文が入っている面もあるかと思います。本当に新しい憲法を作るときにはもっと簡潔にしてほしい、というのが全般的な感想です。なお要綱では内閣の章で首相が国務大臣を任命するとなっている一方、天皇の国事行為の中でも国務大臣を任免するとあります。首相のほうは「指名」とすべきではないでしょうか。

 <西> 結果的に117条で「いいな」という語呂あわせ、聖徳太子の十七条の憲法に対して百十七条の憲法、ということはあります。ただ実際には起草作業をしていて、今の憲法に足りないものを補い、解釈が分かれているものを明記したい、と「あれも、これも入れたい」となりました。国務大臣の任命については現行憲法でも同じような規定になっており、それが残ってしまったわけですね。

 <小田村> 「国の構成」の章で「国民主権」という言葉を明記している理由は何でしょうか。

 <奥村> 私も「国民主権」については疑問を持っています。実際、英米法の国では国民主権の語は使われていません。実質的には国民の参政権に吸収されるものではないでしょうか。

 <百地> 国民主権自体は、必ずしも天皇や皇室のご存在と矛盾しないものと考えています。尊大かもしれませんが、国民の支持があったからこそ皇室が存続してきた事実は否定できないわけです。仮に国民主権を削除した場合に、反発が大きすぎるであろうことも考えました。現行憲法にありながら「国民の憲法」要綱にないことは、否定したのかと思われることがありえます。そこで「これも入れておこう」というものがあり、条文数が多くなってしまった面はありました。

 ◆共産党は護憲ではなかった

 <筆坂> せっかくなので共産党と憲法について初めにお話ししたい。今回の選挙でも共産党は護憲を打ち出しており、多くの人はもともと護憲政党だったと思うかもしれないが、それは誤解で、共産党はまぎれもない改憲政党でした。現行憲法の制定時に、政党として反対したのは共産党だけでした。かつては「こんな憲法は破棄すべきだ」とまで言っていたのです。もともとは日本が自前の軍隊を持つべきだとも言っていた。今ではそうした歴史を知らない党員のほうが多いのではないでしょうか。

 さて今度の選挙で改憲を目指す勢力が大きくなって改憲の好機ではありますが、あまり前のめりにならないほうがいいと思います。もっと全国各地でこのようなシンポジウムを開き、理解を深める努力をしてほしいと願っています。

 <田久保> 筆坂さんはかつては天敵でしたが、今お話をうかがってまさに同志だ、と感じました。ただ最後のところで「前のめりになってはいけない」とのことでしたが今、前のめりにならなかったらいつ前のめりになるのでしょうか。早く憲法改正に前のめりになるべきだ、と改めて強調しておきたいと思います。

 ◆もっと分かりやすく簡潔に

 <小田村> 前文で「天皇を国のもといとする」とありますが、国民にとっては聞き慣れないのではないか。もう少し簡潔にできないでしょうか。

 <奥村> 前文で「国家の目標として独立自存の道義国家を目指す」とありますが、道義という言葉の意味が不明で、法と道徳の区別があいまいになっているのではないでしょうか。

 <田久保> 道義国家とは普遍的な価値観だと思うんですよ。民主主義、自由主義、法治主義という国際的に確定した価値観をしっかりと守っていく国ですよ、しかし同時に独立自存ですよ、と高らかにうたい上げたものです。今の憲法、その他の憲法案に比べてわれわれの要綱が優れているのは、この一点にかかっているかもしれません。

 前文について、冗長で繰り返しが多いとのご指摘もありましたが、1章以降の条文と違って前文には多少、情緒的な文言も入れるのが当然だと思われます。「もとい」という一語について、筆者がどれだけ考証を重ねたことか。考えに考え抜いた文言で、それなりの根拠があって時間をかけて練りだした言葉であるということはご承知おき願えればと思います。

 前文にはいろいろご不満もあるかと思いますが、文章論として声高く朗読できるようなものは、ある一部を削って入れ替えるわけにはいかないものです。この前文全体が生き物になっている、という弁明だけさせていただきたい。

 <小田村> 軍の最高指揮権は元首に属するのが国際的な慣例であり、「軍の最高指揮権は、内閣総理大臣が行使する」という規定の前に、例えば「天皇の名において」と入れてもいいのではないでしょうか。

 ◆天皇と軍の関係避けられぬ

 <奥村> 国防の章において、天皇を国家元首とする以上は、軍との関係は避けられないのではないか。元首でありながら軍の指揮とはまったく無関係だとして、“文”と“武”とを完全に分離してしまうことが近代法のあり方として妥当なのかどうか、もう一度検討を願えればと思います。

 <佐瀬> 天皇と軍の関係については当面はつかず離れず、あまりハッキリ結びつけないほうがいいのではないか。私は軍装の天皇は当面、厳に慎むべきで、あまり事を急ぎすぎてはいけないと考えています。

 <大原> 現状は佐瀬先生ご指摘の通り、天皇を軍の最高指揮官の立場に、というのは難しいでしょう。ただし、君主国において元首たるものは皆、軍の最高司令官の地位を持っておられます。天皇と軍とは無関係ではありえません。自分の生命をも犠牲にして任務に臨む人たちに対して栄誉を授与するのは、やはり国民統合の象徴としての天皇がなさることが必要。しかし憲法上、天皇が最高指揮官だと明記するのには、もう少し時間をかけたほうがよかろうと。例えば天皇が軍を観閲されるといった形で、軍との精神的なつながりを持つことを可能にしておくべきでしょう。

 <丹羽> さきほど筆坂先生から「かつて日本共産党は憲法破棄論を唱えたこともあった」という指摘があったが、今でも憲法破棄論を主張する人はいます。どう考えるべきでしょう。

 <田久保> 石原慎太郎さんもそういうことをおっしゃっている。石原さんは尊敬しているが、短気はいけないと思います。66年もこの憲法を持ち続けてきて、憲法とともに関連の法律なども一緒に破棄できますか。天皇陛下は現行憲法のもとで即位されておられる。時間がかかっても、屈辱的な憲法ではあっても、96条に基づいて筋を通して改正していきたい。破棄論には反対だ、というのが私の立場であります。

 <小田村> 憲法改正は前途多難ですが、一歩ずつ前進していく以外ありません。今の憲法には国家観が欠けており、国家を否定した憲法でありますから、日本を取り戻すために一歩ずつ前進していきたい、このように思っております。
【プロフィル】筆坂秀世

 ふでさか・ひでよ 昭和23年、兵庫県生まれ。高校卒業後、銀行勤務、議員秘書を経て参院議員に。共産党で政策委員長などを務めたが、平成17年に離党。

【プロフィル】小田村四郎

 おだむら・しろう 大正12年、東京都生まれ。東大法学部卒。行政管理事務次官、拓殖大総長などを歴任した。日本戦略研究フォーラム副会長。

【プロフィル】奥村文男

 おくむら・ふみお 昭和22年、兵庫県生まれ。京大法学部卒。大阪国際大教授を経て、平成25年から同大名誉教授。憲法学会常務理事などを務める。

【プロフィル】丹羽文生

 にわ・ふみお 昭和54年、石川県生まれ。拓殖大海外事情研究所助教、東北福祉大非常勤講師を歴任。著書に「日中国交正常化と台湾」など多数。